ネットで大バズり中、こっちのけんとさんの「はいよろこんで」
ダンサブルなサウンドとメッセージ性の深い歌詞の他にも、様々な仕掛けや意味付けが施された「聴く度に新しい発見がある」味わい深い楽曲です。
その中でも気になるのが「モールス信号:トントントンツーツーツートントン」と「鳴らせ君の3~6マス」の意味。
考察が盛り上がるこの楽曲に、こっちのけんとさん本人が解説した動画から「歌詞に込めた意味」をまとめてみました。
- 「はいよろこんで」モールス信号:トントントンツーツーツートントンの意味
- 「はいよろこんで」鳴らせ君の“3から6マス”の意味
- 「はいよろこんで」にこっちのけんとが込めた思い
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「はいよろこんで」モールス信号の意味は「SOS」
まず一番印象的なのは、曲中に出てくる「・・・ーーー・・・」というモールス信号。
“トントントン ツーツーツー トントン”の意味は「SOS」
モールス信号の「SOS」は、国際的な遭難信号として広く知られていますよね。
この信号は、短点:トン(・)と長点:ツー(-)の組み合わせで「・・・- - -・・・」と表されます。
もともとは船舶の遭難信号として使用されていましたが、現在では緊急時に助けを求めるための合図としても使用されます。
「精神が壊れそうなほど苦しいならしっかりSOSを出していこう」という、こっちのけんとさんの願いが込められています。
「はいよろこんで」以外にもモールス信号を使った楽曲が
こっちのけんとさんの「はいよろこんで」以外にもモールス信号を使った楽曲があるのをご存じでしょうか。
邦楽だと、ピンクレディーの1976年リリースのヒット曲「S・O・S」は、冒頭にモールス信号の「SOS」が効果音として使用されていることで知られています。
しかし、モールス信号の「SOS」は遭難信号として認識されるため、電波法に抵触する可能性がありました。
電波法の規定:
遭難信号は、遭難通信のみに用いられるものであり、放送電波を用いて行うことは「遭難の事実のない遭難信号の発信」となる。
そのため、テレビ局やラジオ局では曲の冒頭部分をカットして放送する対応が取られたといいます。
「はいよろこんで」のモールス信号も、信号として効果音を使用するのではなく「トントントン ツーツーツー トントン」と歌詞として採用しているのも、電波法に抵触しないようにのことかもしれませんね。
「3から6マス」の意味は「心拍の正常値」
もう1つ気になるのは、モールス信号の前に出てくる“鳴らせ君の3から6マス”の「3から6マス」の意味。
これは、「人間の心拍の正常値」を表しています。
こっちのけんとさん本人が解説した内容をまとめてみますね。
【こっちのけんと 解説】
心拍の正常値は50から100BPMと言われております。
さらに一般的に心電図では送り速度25mm毎秒と決まっております。
1マスは5mm間隔。つまり3から6マスっていうのが人間でいう正常値ということですね。
【1000万回記念】MVに来たコメントが鋭いから発表します。【はいよろこんで】
心拍の正常値は50回~100回/1分(BPM)と言われていて、それ以下だと徐脈、それ以上だと頻脈と呼びます。
心電図検査などで、こういう紙が流れてきて線が記録されているのを見たことありますよね。
▼正常心電図
横の間隔は時間を表していて、この記録紙の紙送りの速度は通常25mm/秒です。
心電図の背景の方眼紙は1mm刻みで5mmごとに太い線になっているのですが、この5mmごとに1マスとカウントします。
縦の高さは電位の強さで心拍を表していますので、正常心拍数の50回~100回/1分(BPM)の値で心拍が計測された場合は、3~6マス以内に線が縦に振れることになります。
上記の図は3から6マス以内に線が縦に振れていますよね。
上記の図のように3~6マス以内に1回、線が縦に振れている状態を正常心電図といいます。
参考:https://www.kango-roo.com/learning/2173/
この歌詞からも、
「精神が壊れてしまいそうなら、体が正常なうちにSOSを出していこうよ」
というこっちのけんとさんの願いが十二分に感じられますね。
「はいよろこんで」に込めた思いと双極性障害の経験
こっちのけんとさんは、自身が「双極性障害」を患って苦しみ、この曲を作った経緯として、
我ながら未だにうつ病や躁鬱が理解できず「どこからが”病”なのか」「どこまでが”優しさ”や”我慢”なのか」を見失う毎日のため、日々SOSを出す癖をつけたいと思い制作いたしました。
と説明されています。
「性格的に生きやすく生きようと思っても出来ない人間なので、自分を含めて、そういう人の救いになれていたら嬉しい」
とも、話していました。
人の心を掴んで離さないこの曲には、こっちのけんとさんが経験した苦しみが背景にありました。
なぜ「はいよろこんで」が話題に?
「はいよろこんで」は、複数の要因が重なり合って大きな話題となりました。
何が人気を後押ししているのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
「はいよろこんで」の昭和感あふれるMVの斬新さ
「はいよろこんで」のミュージックビデオ(MV)は、「かねひさ和哉」さんという昭和テイストの動画制作で有名なクリエイターが手がけています。まるで昭和時代にタイムスリップしたかのような世界観が、視聴者の心を掴んでいます。
現代のデジタル社会に慣れた若い世代にとって、このレトロな雰囲気は新鮮で魅力的に映るのでしょう。
また、親世代にとっては懐かしさを感じさせる要素となり、幅広い年齢層に訴求しています。
こっちのけんとさんは、一番身近な憂鬱は「月曜日の前の日」であり、俗に言う「サザエさん症候群」ではないかと考え、この「かねひさ和哉」さんにMVを依頼したと言います。
日曜日の夕方から夜にかけて、翌日からの仕事や学校のことを考えて憂鬱になる現象を指します。
この名前は、日曜日の夕方に放送されるアニメ『サザエさん』が由来です。
「かねひさ和哉」さんの昭和テイストのアニメが、サザエさんのエンディングを見ているようですよね。
モールス信号という独特な表現方法
先述のモールス信号の使用は、この曲の大きな特徴です。
先程ご紹介したピンクレディーの「SOS」の事例はありますが、音楽作品の中でモールス信号を使用すること自体珍しく、それを具体的な歌詞として取り入れた例は極めて稀です。
この斬新な表現方法が、リスナーの好奇心を刺激し、「この部分は一体何を意味しているんだろう?」という興味を喚起しています。
そして、その謎解きの過程自体が、楽曲の楽しみ方の一つとなっているのです。
深いメッセージ性
表面的には明るく楽しげな曲調ですが、その歌詞には現代社会の生きづらさや、メンタルヘルスの重要性といった深いテーマが込められています。
このギャップが、多くのリスナー、特に若い世代の共感を呼んでいます。自分の感情をうまく表現できない人々にとって、この曲は自分の気持ちを代弁してくれるものとなっているのかもしれません。
SNSでの二次創作の広がり
TikTokを中心に、この曲を使った動画が多数投稿されています。
特に、こっちのけんとさん本人も多数投稿している、MVの中のダンスを再現した「踊ってみた」動画や、モールス信号部分を別の動画につなげる編集動画などが人気を集めています。
こうした視聴者参加型のコンテンツが、楽曲の認知度をさらに高め、より多くの人々に楽曲を届ける役割を果たしています。
「こっちのけんと」の家族について
実は、こっちのけんとさんは後述するように、有名俳優の実弟です。この事実も、楽曲への注目度を高める一因となっています。
「こっちのけんと」って誰?有名俳優の弟としての苦悩
ここで、「はいよろこんで」のアーティスト、こっちのけんとさんについて少し紹介しましょう。
こっちのけんとさんは、マルチな才能を持つアーティストとして知られています。
特にアカペラの技術を活かした高い歌唱力が評価されており、これまでにも「死ぬな!」などのバイラルヒット曲を生み出しています。
そして、多くの人が驚くのが、こっちのけんとさんは実は人気俳優・菅田将暉さんの実弟だという事実です。
▼菅生三兄弟。左からこっちのけんとさん、菅田将暉さん、末の弟で俳優の菅生新樹
この血縁関係も、こっちのけんとさんや「はいよろこんで」への注目度を高める要因の一つとなっています。
こっちのけんとさんは偉大な兄を持ったことで、常に劣等感を抱えていた事実なども赤裸々に語っていました。
菅田将暉の弟として歩んだ葛藤と成長
「はいよろこんで」という曲の背景には、アーティスト・こっちのけんとこと菅生健人さんの、兄である俳優・菅田将暉さんとの複雑な関係性が隠されています。
菅生さんは、幼少期から「菅田将暉の弟」というレッテルに悩まされてきました。
兄の突然の仮面ライダー出演をきっかけに、周囲からの過度な注目や期待、時にはいじめにも遭遇。
「理想の弟」を演じようとする苦悩や、兄の影響力への複雑な感情を抱えながら成長していきました。
「けんとは歌が上手い」と両親に褒められていたこと、歌なら兄を越えられると思ったこととから、アカペラ活動に全身全霊を捧げます。
大学時代、アカペラで全国大会優勝を果たし、初めて「菅生健人」個人として評価される喜びを味わいますが、その頃兄・菅田将暉さんも歌手デビューをして楽曲も大ヒット。
誰が悪い訳でもないことは分かっていたけれども、どこにぶつけていいか分からない「ふざけるな!」と感じる怒りを経験したといいます。
自分の人生に唯一残された「音楽を盗られた」気がして苦しんでいたこっちのけんとさんに、兄・菅田将暉さんは「健人はすごいな!俺も頑張らないとやな」と心の底から誇らしそうに褒めてくれたといいます。
そこで自分の器の小ささにも打ちひしがれ、情けなさでいっぱいになりました。
「理想の弟」のレールと鬱
そこから菅生健人さんは、兄との差を感じて「理想の菅田将暉の弟レール」に戻り、就職活動を頑張って上場企業に入社しました。
しかし、兄の名声に恥じないようにと弟レールに戻っていても、16歳で単身上京して仮面ライダーなどに出演、大活躍をしていた兄はどんだけ立派なんだと、自分はなんて情けないんだと、心では常に比べて落ち込んでしまっていたのです。
入社1年後に玄関で倒れてしまい、病院で鬱と診断。会社は退職せざるを得なくなり、どん底や挫折を味わいます。
「あっちのけんと」ではなく「こっちのけんと」が誕生
それから菅生健人さんは、仕事はせずにYoutubeで1人でアカペラを始め、今までやりたかったことを始めました。
「というより、それしかできませんでした」と語るように、キレイな理想を追いかけることができなくなっていました。
そこで、「菅田将暉の弟」として恥じないように理想を追いかける「あっちのけんと」と、やりたいことしか続かないと気づいた「こっちのけんと」が誕生しました。
この経験が「こっちのけんと」としての音楽活動につながり、数年後に鬱になった過去の自分に向けて書いた手紙のような曲「死ぬな!」が誕生。SNSで話題になりました。
そして、大バズリちゅうの「はいよろこんで」も、当時の経験から生まれたもの。
「僕が兄より未熟で情けないからこそできた音楽」は、多くの人々の心に響く作品になりました。
こっちのけんとさんは、兄の存在を「宝」と表現し、苦悩を乗り越えられたのは兄の支えがあったからこそだと語っています。
「はいよろこんで」には、このような複雑な兄弟関係と自己実現への葛藤が、繊細に織り込まれているのです。
「はいよろこんで」モールス信号と“3から6マス”の意味は?本人解説の理由が深い まとめ
「はいよろこんで」の成功は、兄の名声に頼ることなく独自の音楽性と表現力で自身のキャリアを築いてきた、こっちのけんとさんの才能と努力が実を結んだ結果と言えますね。
何だかグッときます。
この他にも、こっちのけんとさんが楽曲に込めた思いや仕掛けなどが沢山あるようです。
考えることが好きな方は、じっくり考察してみるのも楽しいですね。
▼世界中で大バズリの「はいよろこんで」英語バージョンもアップされました